第5章 前夜

｢エレン、緊張してる？｣


｢...はい｣


｢気楽に、とは言えないけどそんなに肩を張ることもないよ。

新兵の目標は生きて帰って来ること。

張り詰め過ぎると返って失敗しちゃうよ｣


｢...キョウカさんは緊張しないんですか？｣


｢するよ。

でも緊張に飲み込まれはしない。

憎しみや怒りにも飲み込まれない。

憎しみや怒りは何も生まないからね。

それに頭に血を上らせても、周りが見えなくなるだけだから｣


｢巨人が憎くないんですか...？｣


｢...憎いさ。

巨人は全て駆逐すべきだと思う。

ただ駆逐するにあたって、その巨人は人類にとって悪か否かを定めてからにした方が良いとは思う｣


｢巨人は...皆悪です...！｣


｢そうかもね、でもそうじゃないかもしれない。

一般の巨人は悪よ、人類を食べてしまうからね。



でもエレン、あなたはどう？

巨人化したあなたは、人類にとって何？

悪？それとも希望？


それと同じで、巨人にも悪か否かを定めてから殺す必要があると思うの。

例え敵対して来たとしてもそこの見極めは私は大事にしてる。


ごめん、長く話しちゃったね｣


｢あ、いえ...｣


キョウカさんは自分の信念を胸に壁外調査に出ている。


だからこんなに強いのか？


こんなにも綺麗だと思うのか？


真っ直ぐ前を見て進もうとするキョウカさんは綺麗だ。