第5章 ※三角形 case3※
暫くして来てくれた夜久さんは、こちらが何かを言う前からキレている。
何も言わずに、リエーフの尻を蹴り飛ばしていた。
「夜久さん、すみません。私が食事の誘いに乗っちゃったから。」
「いや、どう考えてもリエーフが悪い。公私混同はすんなって、何回も注意してんのに聞かねぇんだよ、コイツ。」
「でしょうね。リエーフですから。」
「だろ?…ほら、リエーフ、鍵寄越せ。」
約束通り、私が夜久さんに謝って、一旦は怒りが収まったみたいだ。
リエーフから鍵を受け取って、早々に車に乗り込んだ。
リエーフも一緒に帰ると思ったのに、車には乗らない。
「さくら。俺、本気だから。」
たった今、格好悪い所を見たばかりでキメ顔をされても…な、状態で。
「木葉さんと別れて、俺と付き合って下さいっ!」
勢いよく頭を下げられた。
目の前に出された手を、掴む事は出来ずに一歩後ろに退く。
「だから、考えさせてって…。」
かなり駄目な部分を見ちゃったのに、まだ保留。
お断りは、出来なかった。
顔を上げたリエーフの顔が真剣で、また負けそうになったけど。
「リエーフ!いつまでも迷惑掛けてんな!早く乗れ!」
そんな雰囲気は夜久さんの怒号で掻き消えた。