第1章 中学
「りんっち、今日から一緒に帰るんすよね、ね!」
部活に行くと同時に駆け寄ってくる涼太
その様子は前から見慣れてるものと変わらない、相変わらず犬みたいだ
付き合ったからといって目に見える何かが変わるわけじゃなかったけど
「うん、一緒に帰ろ」
空気が温かいと感じるのは気のせいじゃないよね、きっと
「うあー、どうしよう超幸せなんだけど」
かっこいい顔がだらしなくにやける
「うるせーぞ、黄瀬」
「そろそろ練習が始まるのだよ」
大輝に蹴られて、赤司くんとかがいるところに向かっていく
その後ろ姿に微笑んだ
確かに幸せだ
練習中の彼を見て、かっこいいなぁと見惚れて
さつきにつつかれて、笑われて、でもそれでもいいやって思えて
また視線を彼に戻す
時々気づいて、目を合わせて、そっと笑う
いつも以上に部活が楽しい
だからだろうか、直ぐに終わったように感じた
「ねえ、涼太・・・、いっこ、聞いてもいい?」
「?、なんスか?」
帰り道、手を握りながら目を見る
「涼太と灰崎くんが1対1してた時に来た女の子、・・・付き合ってたの?」
「・・・あー・・・」
彼女?とか聞けなくて、そんなこと聞いたら涼太の気持ち疑ってるみたいだから
だから、気になるけど、過去形にしてみた
濁った返事に思わず不安になる、手を強く握った
「あれは、勝手に向こうがそう言ってただけだから。付き合ってなんかないっスよ」
吐き捨てるように言う
「ん、ごめん」
嫌なことも一緒に思い出しちゃったかもしれない、灰崎くんに負けた事とか
「オレが好きなのはりんっちだけっスよ」
「うん、あたしも涼太だけ」
「オレ、好きとかそういうの隠すつもりはないっスから」
ケーイ(敬意)も隠さない男だしね
そう言うと、涼太は額に口づけ一つ
「りんっちだけっスよ」
こういうことするの
そう言って笑う
かっこいい、モデルってずるい
赤くなった顔を俯かせる
別に嫌だったわけじゃないよってことを伝えるため、もっと強く手を握った
隣に涼太の気配、心地いい
「明日はどこか寄って帰ろう?」
「・・・そうっスね」
これからずっと、一緒に入れたらないいなって思いながらそっと笑った