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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第4章 インターハイ


「、、、沙織、、、沙織」
聞き慣れた甘い声が沙織の耳をくすぐる。
「う、、ん、、、?」
「沙織、起きて。着いたよ」
「んあ、、、ごめん、本気で寝ちゃった、、、」
沙織はまだ眠い目をこすり、辺りを見回した。
「えと、、、ここどこ?」
目の前には見たことのない景色が広がる。
「富士山だよ」
巧は笑顔で答えた。
「えぇ!?」
「正確に言うと、その近くだね」
「なんで、、、?」
沙織は固まった。
富士山はインターハイ3日目のコースに入っている場所だった。
「なんでここなの、、、?」
「インターハイをしてる場所だから。見たかったでしょ?」
「なんで!?だって巧は、、、」
反対してたじゃん、、、
目を見開いて巧を見た。
「そうなんだけど、沙織の喜ぶ顔が見たかったから。僕なりのサプライズ」
巧は頭を掻いて答えた。
「いいの?」
「うん、いいよ。ごめんね?黙ってて」
途端、沙織の顔は笑顔に変わった。


どうして僕は、、、


「巧、ありがとう!」
「スタートには間に合わなかったけど、もうすぐこの辺りに来るみたいだよ」
「そうなんだ!」
いそいそと車から降りる準備をする沙織。
「あの旗が立ってるところがコースだよ。気をつけて行っておいで」
「え?巧はいかないの?」
「うん、僕みたいなオジサンに、この陽射しはちょっとね」
「そう、、、なんだ」
途端に沈む沙織の顔。巧は微笑みその頭を撫でた。
「大丈夫。ここで待ってるから。好きなだけ応援しておいで」


キミの前で大人ぶってしまうんだろう


頭を撫でられ安心したように沙織は笑った。
「ありがとう!巧はゆっくりジュースでも飲んでて!」
「うん、そうさせてもらうよ」
「それじゃあ、行って来るね!!」
「うん、行ってらっしゃい」
窓越しに沙織が手を振る。巧も手を振り返す。
そしてどんどん小さくなる沙織の背中を見つめた。


子供のようにキミに行かないでと言えたなら


沙織の姿が見えなくなるとダッシュボードを開き、巧はいつそこに入れたのかも分からない煙草を取り出した。



こんなに苦しくなかったのかな


「フゥー、、、」
巧が吐きだした煙草の煙は青い空にたなびいて高い高い入道雲に吸い込まれていった。
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