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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第1章 春はあけぼの


荒北はイラついていた。先週からの寒波で風邪をひき、思うように自転車がこげない。
それだけではない。昔からそうだったがクラス替えがあるといつも周りがザワザワする。
クラス替えに無意味に浮かれている奴ら、そして何より自分を見てコソコソとウワサ話に勤しむ奴らを見てると無性にイライラした。これが二学期くらいになると、ウワサのネタが尽きるのか、自分達にとって荒北はそれ程害があるわけではないと分かるのか、はたまた希少ではあるが荒北と仲良くなる奴らも出てきたりして、荒北にとってそれ程気になるものでは無くなるのだが。

「まぁ靖友、そんなにイラつくな。とりあえず食え」
そう言ってパワーバーを渡してくるのは、同じクラスになった新開だった。
新開はマイペースで飄々とした男だが自転車に関しては荒北も一目を置く存在だ。ただ新開は荒北とは違い、いわゆるイケメンというやつで、一緒に歩くと周りの女子達がソワソワし始める。その事がまた荒北をイライラさせる。

「いるか!バァーカ!フツーの人間はあんだけ練習して喉が渇いてる時に、テメェみたいにそんなパサパサしたもん、バクバク食えねぇんだよ!ベプシもってこいベプシ!」
「朝から2時間も練習する奴はフツーの人間じゃないよ」
と新開は怒鳴られても何食わぬ顔で答え、さっき荒北に渡しかけたパワーバーをすでに頬張っている。

「おっ、靖友ここが教室だ。席は、、、おめさんは1番後ろの窓際だってさ。俺は、、、ここか。結構離れたな」
「ハッ!教室でまでテメェの顔なんか近くで見たくねぇっつぅの」
荒北は毒づいたが新開は気にもとめず、すでに自分の席に向かいヒラヒラと手を振っていた。
荒北も後ろ側のドアから入って自分の席へと向かう。教室の後ろの方で喋っていた奴らが黙り込み、少し道をあけた。
「ハッ!」
バァカ、俺ァ何もしてねぇだろうが。

実際、荒北は高校に入り自転車競技部に入部してからは喧嘩をしていない。現主将の福富に止められているからというのもあるが、自転車に乗り出してからは喧嘩をすることに意味を見出せなくなっていた。
ただ生まれつきの鋭い目付きとちょっと態度がでかいだけで、俺は常に正論を言っているし、何でそこまで避けられるのかと荒北は思っていた。
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