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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第6章 秋は夕暮れ①


新開にもらったパワーバーを頬張りながら、いつもは荒北といる場所に新開と隣り合って座った。

「ゲホッ、何これ口の中めちゃくちゃパサパサする!」
人にもらっておいて文句を言う。
「そう?俺はこれ大好きなんだけど」
言いつつ何本目だろう。新開は新しいのを取り出して袋を開けた。
「ってかアンタそれいくつ持ってんの?アンタのポケットは4次元ポケットなの?」
思わず色々とツッコミを入れる。
涙はもう乾いていた。
「ん?」
綺麗な顔をパワーバーで膨らませて新開が沙織を見る。
その顔があまりに可笑しくて
「あっははは!何その顔!ヒドイよ、アンタ!女子が泣くよー?」
沙織は笑う。

そういえばコイツ、昼飯食べてないんじゃない?
だからこんなに食べてるのか?
ま、それにしたってポケットに入れてる本数は尋常じゃないけど笑

「沙織ちゃんが笑ってくれるなら誰に泣かれても俺はいいよ」
シレッとキザなことを言う。
「その顔じゃなかったら嬉しいんだけどな!」
そう言って新開の背中を軽く叩いた。
「厳しいなぁー」
大きな目を細めて新開は笑う。

何も聞かないのは新開の優しさだろうか?
その優しさが今は嬉しい。

「ありがとう、新開。ホント、これ食べたら元気出たわ」
新開の目を見て笑ってみせる。
うん、ホラ、もう大丈夫。
「そうか、良かった」
それを見て新開も安心したように笑った。
そして立ち上がって、パンパンと制服についたパワーバーの粉を払う。
「もう行くよ。なんかそこでずっとコソコソ俺が行くのを待ってる奴がいるみたいだし」
そう言いながら屋上の扉へ歩き出す新開。
「は?」
新開はポカンと口を開ける沙織を振り返って、拳銃で撃つように人差し指を沙織に向けた。
そして
「バキュン」
沙織を撃って、新開は去っていった。

なんだそれ。ホント変な奴。

思わず笑みがこぼれた。
しかし沙織のその笑みは、新開と入れ違いで扉から現れた人影を見て凍りついた。

暗い扉の向こうからこちらを伺うように現れたのは、
荒北だった。

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