第5章 葵の花
春華「衛輔くん、これって、こっちの公式当てはめればいいの?」
夜「ん?あー、そう。んで(x+a)の2乗の形に出来るから解いてみ?」
言われた通りに当てはめて、問を解いていく。
春華「あ、きた!ありがとう!」
おう!と衛輔くんも満足そうに笑う。
しばらくして
夜「なぁ春華。ここの和訳ってこれでいいのか?」
春華「Itの指す言葉は?」
夜「んー……。?」
春華「そこ分かれば繋がるよ」
夜「わかった、やって見る!」
数学は衛輔くん、英語は私。
お互いの得意教科と苦手教科が揃っているから
いつも教えて貰っている。
ボーッと勉強をしてる姿を盗み見れば、
パチリと会う視線。
夜「何見てんだよ、ばーか」
春華「目、合っちゃったから、衛輔くんもおんなじだよ?」
ちょっと照れたように視線を逃す衛輔くんをニコニコと見つめる。
私も少しだけ恥ずかしかったけれど、
何となく追いかけてしまうのが好きな人、というものだ。
夜「あー、もう!見るな、ばか!」
顔を左に向けて流し目で、杏色した綺麗な瞳で私を捉える。
少しだけ朱に染まった頬を両手で隠して。
諦めたように視線を参考書に向けると
視界の隅でソワソワしている彼に知らん顔して
小さく微笑んだ。