第5章 葵の花
衛輔くんは教えるのがとってもうまい。
頭もいい人は教えるのも上手いんだなぁとつくづく思う。
定期テストの度にお世話になってしまうのだ。
暖房のよく効いた図書館は、寒さで強ばった頬を一瞬で溶かす。
夜「よし、とりあえず課題片付けるか」
教科書やら参考書やら
リュックいっぱいに詰められた重そうな指南書達がどんどん出てくる。
受験組の課題は特に多い。
問題をひたすら解いて、解いて、解いて
の繰り返しだ。
夜「あー、重かった!」
軽くなったリュックを恨めしそうに睨んで。
春華「そりゃ全部は無理だよ。
そんなに時間もないんだし」
夜「春華の言う通りだったな……。
黙って春華のと合わせて持ってくればよかった」
ちょっとだけ小言を言ってすぐ表情が変わる。
夜「よし、こうなったら全部片付けてやる……!」
衛輔くんはいつもは頭がいいのに、
なんだかときどき単純で、子供みたいで可愛い。
急にスイッチが入って燃えるとことか。
夜「春華も手伝えよ?」
無駄に真剣な顔してニヤリと笑う。
きっとこれは、本当に終えないと帰らなそう、なんて。