第1章 砂漠の月00~70
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放課後、目一杯楽しんだ後には学生らしい苦行が待ち受けている……。
月子は荷物を纏めると朝の挨拶の時に言われた通り、晴久たちのクラスへと向かっていた。
――ガラガラ
「失礼します、あの……」
「月子ちゃん、いらっしゃい」
「市先輩!」
閉じられていた扉を出来る限り静かに開いて影から頭を出した月子は、振り返った市に呼ばれてホッとした様に笑むと手招きされるままに中に入る。
教室にはほとんど生徒が残っておらず、残っている生徒も月子の顔を見るといつもの子かと直ぐに視線を外して自分のことに没頭していく。
月子が市の居るところまで近寄ると、机を向き合せて座っているメンバーが各々教科書を開いていた。市に手招きされて空けてあったらしい空席に座る様に示され荷物を置くと、よっと隣から声が掛けられる。
月子は市と晴久に挟まれ、正面に元就が来るような席になっているらしい。
「えっと、三成先輩と吉継先輩は……」
「家の用事だと言うて帰っていったわ」
「あ、そうなんですね」
月子が席に座ると顔を上げた元親とかすがにも挨拶をし、このクラスに居たはずの他二人をきょとりと探し尋ねる月子に元就が返事を返す。
こっくり頷いて、鞄から今日やろうと思っていた教科のノートと教科書、それにテスト範囲が書かれているプリントを出すと両側から市と晴久がノートを覗きこみ、元就がチラリと見やってくる。
「綺麗なノート、ね」
「ありがとうございます。私、あんまり勉強得意じゃないので予習と復習だけはきちんとやる様にしてるんで、ノート大事なんです」
「マメだな」
偉い偉い、と褒めるように晴久が頭を撫で、元親とかすがもノートを覗き込んで見やすくて良いノートだと感想を言えば月子が照れたようにはにかんで礼を口にする。
月子自身はあまり自分に自信を持てないので控えめだが、成績はそこそこ上の方に居るし勉強もコツコツとやるタイプなので出遅れることもあまりない。
晴久たちと一緒に過ごすようになってからは週末のお泊り会でその週の判らない部分を晴久や元就、市などにそれぞれ得意科目についてはきちんと教えて貰うので今回の試験についてはあまり不安はなかった。