第1章 最初の一ヶ月
「す、すみません!」
店にいるのは不良というよりゲームオタクっぽい人ばっか。
聞こえるのはゲーム音ばかり。
それぞれのゲームに静かに没入し、互いに干渉はしないようだ。
しかし何なんだ、インベーダーゲーム喫茶店って!!
テーブルがそのまんまゲームの筺体(きょうたい)になってますよ!!
コイン投入口とかジョイスティックとかボタンがついてるし!!
あと画面がカラーじゃなくて白黒っ!! レトロにもほどがあるわーっ!!
「じゃあ紹介料払ってほしいザンス。三千円くらいでいいざんすよ~」
「高っ!?」
しかしイヤミ氏が引きそうにないので、渋々三千円払ったのだった。腹いせに通報されても困るし。
そしてルンルンと彼が店を出て、後には私が残された。
私はとりあえずコーヒーを頼み、しばらく迷ってコイン投入口に百円を入れた。
一松さん、お金を遊びに使っちゃってごめんなさい。
画面に出てきたのは何列かのインベーダーと自機。
スコア表示には現在の点数0、前の客が残しただろうハイスコアが誇らしげに表示されている。
ジョイスティックで自機を左右に動かし、隠れ場所っぽいとこで敵弾をしのぎつつ、ミサイルボタンで地道にインベーダーを撃っていく。
チューン、バキュンバキュン。ピロピロ。
「昔はこんなのが流行ってたんですねー」
単純なゲームだこと。当時は、社会現象になるくらい大ヒットしたらしいが。
今なら小学生でもプログラミングで作れるだろうに。
当時はそれだけ娯楽がなかったんだろう。何せファミコンが出る前だしなあ。
昭和の人々を気の毒に思いつつ、撃っていく。
簡単にゲームクリ……。
「え」
うわ、油断してたらアッサリとゲームオーバー!!
だ、だが軍資金はまだある。インベーダーどもはゆっくりなのだ。
こうやって、堅実に撃っていけばハイスコアなんてアッサリ更新――。
「あ!」
また全滅。あれ、UFO撃ったら一気に点数が入った! ラッキー!
と思ってたらもう残機ゼロ?! うわああああ! ゲームオーバー!
いや待て待て。コツがちょっと分かってきた。
もう一回! もう一回!!
単純さゆえの中毒性。私は気がつくと夢中になって撃っていた。