第94章 創傷(そうしょう)
その頃、下界では……
アイズ「また…置いてかれちゃった…」ぽつり
膝を抱え、自室で一人きりで眠りにつくアイズであった…
夢見が悪く、飛び起きてしまったらしい……
その夢とは…昔の夢……
アルバート「済まない、アイズ…
行くぞアリア」
アイズ「待って!!私も一緒に行く!!」
アリア「駄目なの…
貴方は、連れては行けない」
アイズ「なんで!!
いやだ!!まって!!
おとうさん!!!おかあさん!!!」
アルバート「アイズ…
ごめんな」ケイトの姿と重なる
アリア「ごめんね」フィンの姿と重なる
アイズ「まって!!!!(いやだ!!!!」
手を必死に伸ばし、涙ながらに叫んだ瞬間
夢から目が覚めた
そのアイズの大声に
隣室に居たリヴェリアは飛び起き
その背を優しく撫で、泣きじゃくるアイズに付き添っていた
リヴェリア「大丈夫だ
方法は見つかる
きっと…
必ず会う」
アイズ「なんで…
なんで…そう言い切れるの?
あんな別れ方したのに?
命が危ないからって
リヴェリア「なら気付かず死ねばよかったのか?
アイズ「ううん!」頭を振る
リヴェリア「………
私も…気持ちは同じだ
すぐにでも行って駆け付けてやりたい
だが…深淵が、それを赦さない
赦してはくれないんだ
私達は…主犯格の癌に一度…いや、何度か手を貸した側だ
その浄化の為に、あの子は…ケイトは、命を張った
命だけじゃない…自我も、記憶も…己という全てを、文字通り削って」天を見上げる
アイズ「わかってる…
でもっ」涙目
もう会えないの?
そんな言葉を、アイズは飲み込んでいた
言ってしまえば現実になりそうで、言えずにいた言葉を――
リヴェリア「…………
今…原初の神々と話し合っている
深淵の条件は変わらない
たまたま原初の滅神が、原初の始祖神の回復に一番向いていた
そして宿灘が、原初の始祖神の補修に一番向いていた
だからこそ…対価が、深淵の条件が、常に原初の始祖神と共に居ること、生涯原初の始祖神の側から離れられない、なのだろう
今…手を尽くしている最中だ
この星をより良くしなければ、住むことすらままならない
以前のように過ごすことすらな…
今出来ることをしよう
深淵の条件は、自らが選べるものでは無い
各々の適性に応じて、最も絶大な効力を発揮させる為に定められるのだから」
