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Unlimited【ダンまち】

第82章 光芒(こうぼう)





そうして…
わざわざお断りを取って(家長ではなく私にだが)、
池の近くにあった木に、馬のたずなを結んだ

不自由なく過ごせるように、ゆとりを取るように、長さを調節して……


その光景を、私(前世の僕)は小窓から静かに見ていた

前世の僕は女だったのもあって、男を立てるといった風習が強く根付いてあった
男のすることに口出しをしてはならぬ、といった決まりもある程で…

男の中には問題があるものの方が数多くいた、だが…彼のようなタイプの人は、初めて見たのだ――



馬術を教えることになった、初めての邂逅の日

それから…
あしげしく通ってくれた

私と出会わせてくれた、馬に乗って


最初に手渡されたのは…薄いピンク色の花だった

正能「これを…」
格子越しに左手で差し出された花を受け取って…言葉を返す

「綺麗…
押し花にして取っておきますね^^」

正能「ああ」微笑

それから…他愛無い話を数刻ほどして、帰っていった


ハクサンフウロと呼ばれる花だった…

その花言葉を、侍従から教わった…


変わらぬ信頼――と


その次に持ってきてくれたのは、
腕から零れ落ちんばかりの山菜だった

(どれもこれも、ここらでは取れないものばかり…)

それも新鮮なものを取り揃えて――


次は岩塩を持ってきてくれた
とても品質のいいもので、一番いいものを持ってきたと言われた

「あの…そんなに持ってこられても、返すものがございません」


正能「何を言う
教えてくれたではないか」

「え?」

その時になって初めて、理由を教えてくれた…

何度もあしげしく通い、届けてくれた意味を――


正能「馬に乗ったのは初めてで…
もし山に行ってしまえば、そのまま野垂れ死んでいただろう」
「ええ?」瞠目

正能「私には馬は殺せない、馬に罪は無いから
問題があるとしたら…御する術を身に着けられなかった私の方だ

だから…本当に助かったのだ」

そう、真っ直ぐにこちらを見て、微笑を向ける


馬を御する術を教えてくれたこと、心より感謝する
と、最初に言ってくれた時の言葉の意味を

その時になって…知った


正能「心ばかりの品で、些細なものばかりだが…返したかった
少しでも恩に報いたかった

改めて感謝する
この恩は、どんなにか言葉に尽くしても足りない

……ありがとう」

と…


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