第58章 堕天
ケイト「………
死んじまえ」
ごっっ!!!!!!
ケイトの全身が凄まじい闇に包まれる中、周囲へ災禍の如く猛威を振りまく。
精神まで闇に塗り潰され、口元に笑みを浮かべ…
それまでにぶつけたかった全てをぶつけるかのように――グラン・バーストを解き放った
止めようとする僕へ向けて、空間ごと世界全てを消し去れる威力のそれが放たれる。
ケイト『間違えかけたら、その時は…何をしてでも止めてね』
ああ――わかっている
あの時…覚悟はとうに決めていた。
フィン『僕へぶつけてくれ――感情も、力も、その全てを
受けて立つ』真剣←2192ページ参照
何を賭してでも…
僕という存在全てを懸けてでも、君を守ると――
光の全てを注ぎ込む為…
僕自身の全てを光として力を捧ぐ為に
受け入れると同時に両腕の中に閉じ込め、全てを注ぐ為に…
黙って笑い、両腕を拡げて待ち構えた。
彼女の脇差が、漆黒の闇と共に僕の胸へ突き刺さった。
フィン「?」
――はずだった
僕の胸へ突き立てられた脇差は、何故か突き刺さることはなく…
闇が傷付けることを拒んでいるように、頑なに刺さるまいとされ続けていた。
その時、ケイトから今日教わったことが頭へ浮かんだ。
闇だと魂が消滅を望んだ全てを滅し、破壊に向いており
光だと魂の望む全てを叶える。←2194ページ参照
魂の力とは…魂の意志の強さに起因している……
本当に望んだことであればいかんなく力は発揮される。
しかし…望んだことでなければ力は発揮されず、それそのものをも拒む。
ケイト「うわあああああああああああっっ!!」
何度も突き立てられる中、恐怖と焦燥がすぐ近くに感じた。
次第にそれは慟哭へと変わり、滂沱の涙と共に狂ったように何度も脇差を突き立てられ、闇を込めながらぶつけられ続けた。
消えたくはない――
消されたくない――
折角生まれてきたのに――
また邪魔者扱いされる――
――同じ存在のはずなのに
フィン「……」
その姿を見た時…ずきりと胸が痛んだ。
闇が、憎いわけではない…
それを伝える為、包み込むように、滅さないように光を送りながら、静かに彼女を腕の中に抱いた。
フィン「僕の闇は…君が死ぬことを、望んではいない」