第89章 頬を抓れば、すぐに分かる 参
side.O
仕事が早上がりだったから、着替えて迎えに行ってみようか、と思い付いた。
サトコちゃんの恰好だと、潤は手を繋いだりしてくれるから。
それが嬉しいから、それを目当てに、俺は浮かれてた。
ニノにキスマークを付けられたことも、すっかり忘れて。
ううん。忘れてる、と自分を騙してたのかもしれない。
もし潤が反応しなかったら、俺は”それまで”だから。
だから、忘れたことにした。
喉仏を隠すのもお座なりに、襟ぐりの空いた服を着た。
だって、潤が買ってくれたんだ。
少しで良いから、意識をするように仕向けたかった。
きっと、半分くらいは、出来心だったんだ。