第1章 前編
ケア型ロボット。
それは心に傷を負った者を癒すために派遣されるロボットで、今世界中で話題になっていた。
失った家族、子供、または恋人を投影した姿で依頼主の元へ派遣され、心を癒す。
そして依頼主が精神的に回復したら、ロボットはあるべき場所へ帰る。そういう契約がほとんどだ。
中にはそのまま買い取る人もいるようだが
そんなことをしていったい何になるというんだ?
ローは自室へ戻るとソファーに座り、表情を歪めた。
姿形は同じでも、死んだ人間が戻って来たわけではない。
そんな気休めを求めてる人がいるのは勝手だが、おれはそんなものを求めてるわけではない。
人ではない無機物と一緒にいたところで、虚しいだけだ。
ローはソファーに横になると、白い天井を見上げた。
彼女を殺してから毎晩のように見る悪夢。
夢の中で見る彼女の表情は、何時も憎しみに染まっていた。
ーーー違うっ!!私じゃない!!
処刑される最後のその瞬間まで、彼女はそう叫んでいた。
その声が、表情が、ローの脳裏に焼き付いて離れない。
ローは彼女に裏切られた。
その裏切りが誰かに仕組まれたものだと分かった時には、何もかも遅かった。
ローは拳をソファーに叩きつけると、ゆっくり目を閉じた。
夢の中で彼女から向けられる視線は怖いが、いい加減寝ないと本当に倒れそうだった。
ローは暗闇に浮かぶ彼女の憎しみの表情を消すと、無理矢理眠りに入っていった。