第1章 幼少期
「市の兄上?あのおっさん父上と母上に婆娑羅全開で説教してたんだぜ」
「あの勢いは凄かったよねー」
「?(もぐもぐ)」
えーと、兄さまの武勇伝(?)を上機嫌で語る梵天丸と時宗丸。竺丸は年齢的に覚えてないのかな?
甘味は美味しいですが、兄さまの起こした行動を聞いててこちらは苦笑いです
すごいね、兄さまって。
「市の兄上殿はお方様に
『子が化物と言うの成らば、其れを産んだお前も、泣き母にすがる子を嫌うお前も化物に成り下がった』と懇々と説いておられました」
景綱さんが笑って当時を振り返って説明してくれる
「その後暫く母上は落ち込んでて、少しずつ俺と話してくれるようになったんだ」
「市の兄さん凄い剣幕だったからねぇ」
其れで、少しずつ溝が取れて今の義姫様があるのね。
昨日見た表情は嘘偽りの無いお母さんの顔だったもの・・・
多分、輝宗様も兄さまに怒られたあと義姫様にも説得したのかな。
「市の兄上、父上ぶっ飛ばしてたな」
「凄い勢いで城破壊して飛んでたね」
おう・・・想像以上の事をなさってました兄さま。
仲の良い友人同士だから許されるの・・・かな?
いや、下手したら国交問題だけど
兄さまの手で問題を握り潰す光景が目に浮かんでちょっと頭痛いです。
「今は、殿もお方様も兄上殿には大変感謝しておられます、勿論俺もだ」
景綱さんが頭を下げ笑う、当時相当不安だったんだろうなぁ
「・・・?」
一瞬、何か
「お市様?どうした」
「ううん、何も」
振り向いても、何も・・・誰も居ない
ほんの一瞬だけど変な感覚、気のせいかな。
私達はのんびり、米沢城に帰って行った。
部屋に戻り、3人だけになったのを確認して会議開始
「黒羽、お願いしても、いい?」
「はい、何でしょう」
「こっそり、畠山義継さまの動向を、探って欲しいんだけど」
「分かりました」
そして雹牙に向き直り
「雹牙は、黒羽から裏を取れたら、輝宗様に謀反の疑いがある、と」
「お市様の護衛はどうなる」
「取り敢えず、明日一日は薙刀と婆裟羅をいつでも出せる様に?」
そう言ったら2人に溜め息を吐かれた。
「姫様、雹牙の任も私がしますから。御一人にならないで下さい」
「あ、うん」
ここは黒脛巾が居るから大丈夫だと思うんだけど。
黒羽がちょっと怖かったから頷いておいた。