第1章 幼少期
「市ちゃんも凄い、お兄さんのお使いで国を一人で離れるなんて、私は怖くてできない」
んん?私の話になったぞう?これは予想外です。
「市は、守りたかったの」
「お、兄さんを?」
「大好きな、兄さまも、そうねでも」
旅に出てから出来た色々な縁を想う
「付いて来てくれた家族も、友達になった人達、松寿丸も、もちろん弥三郎も、毛利の皆様も、国親様も皆、幸せになって欲しいの」
欲張りなんだなーとはつくづく思うけど
何もしないよりかはマシかなーと、要は自己満足の塊でしかないのだけれどね
「もし、戦になったら?」
「市は、何もしないで、亡くすよりも、守りたいかな?弥三郎は、もし国親様が戦で危ない、ってなったらどうする?」
「やだ、父上が居なくなるのは嫌!」
そこで弥三郎のおでこと自分のおでこをこつんとぶつけて
彼の背中に手を回して落ち着く様にポンポンと一定のリズムで叩く
「市も、兄さまや皆が居なくなるのは嫌、進んで戦うのではなくて、守る為に戦うの」
何も無理して天下を目指してグイグイと戦をするのではなく
自分の領地を守る為の鉄壁であるだけで良いじゃないか。
まだ小さなこの島国だから言える事だけど。
世界って広い。
「私は、この国を、土佐を守れるかな」
ぽつりと出た言葉に思わず微笑んで
「まずは、お友達と仲直り?」
「う、頑張る」
「大丈夫、反省してた、よ」
「喜介を知ってるの?」
「名前・・・は知らないけど、鬼子って、酷い事言ったって浜辺で・・・」
そう言ったら、多分その子で合ってると言ったあとちょっと考える様に
「鬼子・・・か」
「弥三郎、大丈夫?」
嫌な事思い出させたかなと一瞬思ったが弥三郎の顔を見るとそうでもないないみたい?
「あ、ごめんね市ちゃん。鬼って呼ばれてるならその通りにしちゃえば良いんじゃないかなって」
途端に悪戯っ子の様な顔で笑われて
あれあれ?もしかしてこんな所で鬼ヶ島の鬼フラグ?
なんてこったい!予想外にも程があるぞ。
この子ってば開き直ったら早いのね、としみじみ思った。