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夢の詰め合わせ

第2章 先生と生徒


「失礼します!」

ノックのあと先生の返事も待たずに戸を開けると銀八が顔を上げるのが見えた。

「日誌、持ってきました」
「あぁ、そこに置いていて」

指差した方を見ると応接用のローテーブルがあった。

「あと、文化祭のアンケートも集まったので隣に置いておきますね!」
「ん。サンキュ。どうだ?出し物は」
「サッと目を通した感じカフェ系が多いですね」
「ナントカ喫茶ってやつか?」
「そうですねー。先生はなんでもいいんですか?」
「あぁ。お化け屋敷以外はな!」
「ふふっ、先生が怖いの苦手なのホント意外です」

クスクスっと笑うとジロリと睨まれた。

「クソッ… だけだかんな!誰にも言うなよ!」
「ふふっ、分かってますよ」

銀八は書き物をしていた手を止めて立ち上がり、戸棚からカップを2つ取り出してインスタントのコーヒーを煎れてくれた。

「いいんですか?」
「あぁ。日直と文化祭実行委員と生徒会と学級委員を頑張ってるご褒美だ。ありがたく受けとるよーに!」
「えへへ、ありがとうございます」

温かいカップを手で包み込み応接用のソファに腰を下ろした。

(・・・・・・あれ?)

コーヒーを一口飲んで違和感が過る。
それに銀八も気付いたようでニヤニヤと私のとなりに座った。

「せ、先生?」
「ん?」

恐る恐る覗き混むといつもの穏やかな顔をしているが、その赤い瞳は笑ってはいなかった。

「あの…私、先生にコーヒーの好みって…言いましたっけ?」
「ん?だって、いつも飲んでるでしょ?自販機の無糖コーヒーにミルクポーション2つ入れてるし、学食のカフェオレはいつも砂糖抜きで頼んでたよね?」
「・・・・・・」
「あと、バイト先のコーヒーショップでもいつも帰りに無糖のカフェオレ飲んで帰るし」
「いつ、も?」
「そう、いつも。」

コトリと銀八は自分のカップをテーブルに置き、その空いた手で私のカップを手ごと包み込んだ。

「せ、センセ…?」
「本当はブラックで飲みたいけど胃が弱いから仕方なくミルク入れてるんだよなぁ?先生、お前のことなら何でも知ってるんだぜ?」

捕まれた手に力が入る。
ニヤリと歪んだ口許に恐怖を感じて身動いだ瞬間、視界がグラリと回った。
フワッと意識がブラックアウトする間際、カップを抜き取られ背中にソファーの感触がした。

「 、アイシテル」
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