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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第51章 歌声よおこれ



本番15分前。

「結構お客さん入っとるよっ…!」

幕の隙間から客席を覗くお茶子ちゃんの声で心臓が跳ね上がる。どれどれと私も客席を覗いてみると、講堂いっぱいにお客さんが入っているのが見える。ザワザワと楽しみにしているであろう声も聞こえる。腕組をして舞台上を睨みつけるようにして見ている人もいる。

「あ……あぁ……」

思わず何歩か後ずさってしまった。こんなにお客さんが集まっているだなんて。

「あーんど。緊張してんね。」
「響香ちゃん……!だってほら、みてっ!」
「うん、見た見た。」

振り返ると、いつもよりちょっとだけ硬い表情の響香ちゃんがいた。私とは違う、AバンドのTシャツの衣装だ。
バント隊。今回のライブの要であり、主役だ。

「やっぱ緊張、すんね。」
「あ、響香ちゃんでも、するんだ。ベースも歌も凄いから、緊張しないかと……」
「するよ。みんなと一緒。」
「そっか……!」

硬い表情のままカッコよく笑う響香ちゃんを見て、思わず手が伸びた。
私は胸の前で握っていたキンキンに冷たい手で彼女の手をぎゅっと握る。彼女の手は、暖かく感じるけれど、たぶんそこそこちゃんと冷たい。

「冷たっ!」
「緊張……してて。ていうか、響香ちゃんも。冷たい。」
「へへ、緊張すると、やっぱね。」
「……急に、ごめんね。繋いでた方が、緊張ほぐれるかなって、思って。」

いつもすごくカッコよくベースを弾いてくれる響香ちゃんのカッコいい手を、大事に包む。彼女が少しでも安心できるようにと祈りながら。響香ちゃんは少し驚いた顔をしたあと、笑ってくれた。

「頑張ろう、ね。」
「ふふっ、うん。」

そう言うと響香ちゃんは手をぱっと開いて、私の手を上から包み込んだ。

「安藤もっ!ぶちかまそ!」
「う、うん!ブチカマスッ…!」
「じゃっ、機材確認してくる!」

響香ちゃんはパッと手を離すとそのまま舞台の方へ歩いていった。自由になった両手を胸の前でぎゅっと握りしめる。

「青山くん、デクくんは!?」
「この期に及んで何しとんじゃスットロがあ!」

出久くんがまだ舞台裏に来ていないらしい。
買い出しに凄く時間がかかったみたいで、まだ色々としてるみたいだった。

彼はこのライブで、エリちゃんを笑顔にするって言ってた。だから、何がなんでもライブには間に合わせてくれるはず。
だから心配はしてなかった。

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