第23章 呪われ
お風呂、今日は峰田くんの襲撃を受けることもなく、落ち着いて入ることが出来た。でもちっぱい問題は解決していない。多分一生解決しない。
部屋に戻りなんとなく大きな荷物に手を突っ込むと、ワケわからないものが大量に出てきた。
ゴソゴソ
ガチャ、チャリ、モフ、ぬるり。
ぬるり……?
クマのぬいぐるみ、魔法少女に変身できそうなコンパクトにステッキ。水鉄砲ビー玉、オモチャの剣。挙げ句の果てにはスライム。容器に収まっていただけましだった。
一旦外に並べてみたけど、それらは容赦なくカオスを展開してて言葉を失った。
「うわぁ、ひよこちゃんこれどうしたの?」
「………出してくるの、忘れた…。」
「なんか、懐かしい。」
全部外に並べると、みんなそれらで遊び出した。案外いらないものでもなかったかも。みんな楽しそう。
ふと、袋の中にまだ何かあることに気がつく。
「ぃっ…。」
小さく悲鳴が出た。
いちばん底には何故か、折りたたみ式のナイフが転がっていたのだ。
ぞわわ、と背筋の震えが首まで登ってくる。
なんで?みんながこんなの、いれる…?
震える思考をグルグル回し辿りついたのは、あのぺたぺたと音を立てて歩く、あの後ろ姿。
優の、イタズラ…?
震えが熱に変わって、少しだけムッとする。
帰ったら叱らないと。
ムッとしたままそれをポケットにしまう。
みんなはオモチャで遊ぶのに夢中で、優のイタズラには気づいてはいなかった。
ふう、とひと息つき腰をあげる。時計を見ると、結構それなりの時間。もやりと心に霧が立った。
「わ、わたし、補習いってくるっ!」
「わわっ!待って待って!!置いてかないでよー!」
無駄に気合をいれて声を出すと、魔法少女になれるコンパクトで遊んでいた三奈ちゃんが慌てて走ってくる。
「いくかぁ!イヤなものはぱっぱと終わらせなきゃなぁ!」
「うん!」
気合を入れて、ふたりで廊下を歩く。
三奈ちゃんの1歩くらい後ろを、私は歩いた。
「いやぁ!女子ひとりじゃなくてよかったよ!安藤いてよかったぁ!」
「私も、ひとりじゃなくって安心した…。」
そんなことを話しながらも、心に立った霧は濃くなって。
『夢を諦める方法は誰も教えてくれない。』
そんな自分の言葉ばかりが頭に浮かんで響いて、ガンガンした。