第2章 プライド×劣等感
「おたんこなすび?」
「ちげぇ!!」
それからまたぽこぽこと考えて、ピコーんとひとつ閃く。
「もしかして……大嫌い?」
「……。」
多分、無言は肯定だ。
……ちょっと嬉しかった。
さっきの黒いジュクジュクは、勝己くんのその言葉に、だんだん小さく、まぁるくなっていって、もう見えないくらい小さくなった。
勝己君の中で私の存在は、壁のちょっとした油汚れくらいだと思ってた。ちょっとは勝己くんの中にも私の存在はあるってことかな。
……でも、油汚れに嫌われるのもなんか腹立つな…。
勝己くんの心にも、私の居場所はあるんだ、なんて分かって、なんだか嬉しい。
じっと目を見て返事をする。そうは言っても暗くて全然見えないけど。
水の中で体制を整え、捻った足を庇いながら正座をして向かい合う。
「さっきのは……嘘…です。勝己くんのこと……全然嫌いじゃないです。本当。ちょっとムかッとして言っちゃっただけ、です。ごめんなさい。」
「うるせぇ。」
そう言いながら手を出してくれる。優しいところもあるんだ。どーでもいい奴でも、誰かに嫌われることが嫌なのかもしれないな。
横暴なやつだけど、可愛いところもあるじゃないか。
なんて、少し上から目線なことを考えた。