【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
珍しく口篭る光秀さんは、俺の横をすり抜け立ち去っていく。
何か言いたかったのだろうか、とぼんやり考え、またはっと我に返り、先を急ぐ。
朝から姿の見えない秀吉さん。
何故かはっきりしない光秀さん。
そして、朝餉もとっくに終わった時間なのに、あの能天気な声を、何度言ってもバタバタと騒がしい足音を、一度も耳にしていない。
おかしなほど、胸がざわつく。
何でもない事が重なって、気になっているだけだ、と言い聞かせる。
早く、あの姿さえ、あの笑顔さえ目に出来れば、こんなみっともない焦りも忽ち消え失せるのに――
「早く、おかえりって言いに来なよね」
出立前に、真っ先に迎えに出る、なんて言ってた癖にさ――そう独りごちながら足を進める。
天守までの階段も、あと数段を残すばかりだった。