【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第4章 roasting
「貴様ら、先に戻っておるぞ。
千花の所望だ、茶席の仕度をせい」
「「御意っ」」
おずおずと皆を見下ろす。
家康が、何とも言えない表情でこちらを見ているのと目が合った。
とりあえず、と笑いかけてみるけれど、ふい、と顔を逸らされる。
何故だろうと不安になるけれど、信長様が一蹴り入れると馬がゆるゆると歩き出した。
「わ、わ、信長様っ…!」
少しの恐怖で名前を呼んでみると、片腕が手綱から離れ、ぐっと腰を支える様に回された。
漸く体制が安定した事にほっと息をつき、後ろを振り返ってみるけれど、踵を返し歩き出している家康の表情はもうわからない――
「誰ぞ気になるか」
「…え!?いや、そういう訳では、」
家康ばかりを目で追っていることが気恥ずかしくなって、前を向き直る。
すると信長様が、ん、と訝しがるような声を上げた。
「見慣れぬ簪をしておるな、千花」
「あ、これは…」
簪に手をやる、しゃり、と鳴る飾り。
家康が着けてくれた時の事を思い返すだけで、身体が火照る。
信長様にもその温度が伝わったのか、くつくつと喉を鳴らし笑われた。
「誰に貰ったかは敢えて聞かぬが…
簪を女に贈る意味、知っての事であろうな」
「意味?」
「知らずに受け取ったか…
知っていても変わらんのだろうが」