Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
店に到着した一同は、早速店内に入って大人数用のスペースに腰を下ろす。
店内には大人ばかりで子供はエミリだけのようだ。それだからか少し落ち着かずキョロキョロしていると、彼女の隣に座っているリヴァイがメニュー表を差し出した。
「お前も何か頼め」
「はい! ありがとうございます」
メニュー表を受け取りそれを開いて料理名を上から順番に見ていく。
どれも美味しそうだ。読んでいるだけでお腹が空いてきたエミリは、ふと気になった値段を目にして固まった。
「…………高っ!!」
そりゃあ、司令と団長と兵士長が飲み行くような場所なのだからそれなりに値段はするだろうが、予想を上回った。
一応、金は財布に詰め込んできたが一食だけで精一杯だろう。
でもお腹が空いて仕方が無い。
たくさん食べたい。
さて、どうする。
「エミリ、今日はワシの奢りじゃ。値段など気にせず好きなだけ食べるといい。ワシから誘ったんじゃからのう」
「す、すみません……ありがとうございます……」
値段が値段だけに申し訳ない気持ちの方が強いが、これは奢ってもらわなければ流石に無理だ。
項垂れるように頭を下げたエミリは、再びメニュー表へ顔を向けた。できるだけ値段を視界にいれないように頑張った。
「けど、司令……」
「なんじゃ? ハンネス」
「こいつ、すげぇ食欲ですよ。制限かけないと値段がとんでもないことになりますって」
「うっ……」
エミリの正面に座っているハンネスが、彼女へ指を指しながらピクシスに警告する。
小さい頃からエミリはよく食べる子だった。ちなみに弟のエレンも同じだ。
姉弟揃って大食いなため、お小遣いだって食べ物に注ぎ込むことが多かった。
「はは、それくらい構わん。寧ろ、壁外で巨人と戦っておるんじゃからのう、よく食べ栄養をつけてもらわなければ困るじゃろう。のう、エルヴィン」
「そうですね」
「こいつの場合は食い過ぎな気もするがな」
リヴァイが思い出すのは、エーベルとシュテフィの結婚式でのこと。
あの時初めてエミリの食欲の凄さを知ったが、正直見ているこちらが呆れるほどだった。