rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第18章 teardrop after Ⅶ
―――。
――。
個室の扉にスッと寄せる身体。
横顔を近付け、すました耳が認識したのは、微かに聞こえた名無しの甘い声。
手元に持っていたのは携帯だ。
映し出されていた画面に時折視線をやり、静かに嘲笑を見せていたのはナッシュだった。
「・・・・フッ」
時間差で店に来ていたのも気まぐれだろう。
少なくともそう思わせるのが、彼の策のうちだった。
尻軽さゆえ、元々連れていた女が首を縦に振るのも分かっていたし、そのまま顔を出し何食わぬ素振りをして、店内で起きた流れを問う。
名無しがシルバーと共に個室に入っていたのもおおよそ見当のついていたこと・・・。
ナッシュが鳴らしていた相手のそれは、他ならぬシルバーの携帯だ。
「夢中になってんのはどっちかなんざ、目に見えなくても分かるもんだな・・・好い声出しやがって・・」
漏らす言葉は低く、淀みのある声音はされど本心。
そもそも通話に応じるなどとは微塵も思っていなかった。