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【イケメン戦国】戦国舞花録

第22章 『衝動』





こ…………
これは……………っ!!

ぬいぐるみか!?
それとも猫が突然変異したのか!?
はたまた幻覚か………



ーーー否、本物だ!!




「これって……まさか」


驚愕のあまり立ち尽くす私の目の前には。
実際には動物園でしか見ることの出来ないものが存在していて………

潤んだつぶらな瞳、
ピンと立った耳。
オレンジ色に黒い縞模様が入った毛並みがふわふわと。

よちよちと覚束ない様子で歩き………
伊達の足元で嬉しそうにじゃれついている。


「留守番、御苦労だったな」


ひょい、と抱き上げ奴が話し掛けると
返事をするかのようにトーンの高い幼声を発した、その生き物。


「これ……これ……」

「こいつは照月といってな。まだ子どもの虎だ」

「………あんたが飼ってんの?」

「ああ」

「…………!!」


衝撃が走り、口がだらしなく開きっぱなしになってしまう。

ーーーテレビでたまにやってるよね、
猛獣と暮らす人間特集、ってやつ。
それを体現する奴が、今ここにーーー

すると。
伊達の腕の中にすっぽり収まっている子虎は、私の顔を見つめながら………
片方の短い前足を一所懸命に伸ばし、こちらへ差し伸べてくる。

ミィミィ、と愛くるしく鳴いて
一所懸命…………

…………


・・・・・


「おい、照月がお前のところへ行きたいってよ」

「…………。いい」


首を左右に振り、素っ気なく拒否するも。
ほらほら、と伊達が何度も促してきて……
その度に私は断固として首を振り続けた。

そうしているとーーー


「政宗っ、私もお菓子作り手伝うから厨へ行こう?」


私達のやり取りを遮るかのように間に割って入った姉は、伊達から照月を受け取りそっと畳に下ろした。


「じゃあ暫く席を外すから蓮はこの子と部屋で待っててね?
さっ、政宗行こ」

「えっ……あ、おい、百合……」


戸惑う伊達の背中を無理矢理押して部屋から出ていく姉ーーー
そして、襖が閉まる直前。
去り際に振り向いてウィンクを飛ばしてきた。



……………その意図が何なのか分かってしまった私は。
照れ臭ささでいっぱいになりーーー明後日の方向へ視線をやった。



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