第34章 私立リアリン学園!13時間目~レイヴィス~
第一音楽堂では、ブラームスの交響曲第一番が厳かに奏でられている。
自身のヴァイオリンから流れる旋律と絡み合う、さまざまな楽器の音色。
緊迫した、この空気感。神経を一心に研ぎ澄ませ、身を沈ませる。
―――身震いしそうなほど、至福の時だ。
第一音楽堂は、五つある音楽堂の中で、一番大きなホールだ。全体練習の時は、いつもここを使っている。
来た者から順に、会話を交わすでもなく、おもむろに各々不得手な箇所を弾き始めていく。そして、それが一人増え、二人増えていく度に、誰が言うでもなく、同じ調べを奏で始めていくのだ。
オザワセー部長は、だいたいいつも最後の方にやってくる。ホールに入ってくるなり指揮棒を振り始める。待ちきれないといった様子で、勢いをつけてステージにあがってくる。
自分勝手に演奏している俺らの暴走を同じレールに乗せて走らせようと躍起になる。
彼の姿が目に入ると、オケの緊張感は、最高潮に達する。
これが、いつもの練習風景だ。
一心不乱に指揮棒を振る部長。
彼は耳がいい。少しの音程のズレもしっかり気づいてる。演奏中に指揮棒で指し、注意勧告してく。そして、それは、周囲の者まで萎縮させてしまう。
無言の圧力だ。情熱はわかる。けれど、これ、一種の拷問だ。
何を注意されたのか指された当人は、気づいていない。同じミスを繰り返す。
だから、俺が部長に代わって間違いを指摘することとなった。