第33章 私立リアリン学園!~アルバート~ 情熱編
~初めて~
「いいよ、着てあげる」
「では、お願いします」
メイド服を着て欲しいと頼むと、リリカはすぐに承諾してくれた。
ダメ元で頼んだつもりだったので、まったくの想定外で心の準備ができていない。とりあえずリリカから少しでも距離を置こうとベッドに座る。
期待で高ぶる気持ちが、どうにもならない。落ち着かなくてはと思い、正座をしてみる。
落ち着け、俺。落ち着け、俺―――。
呪文のように心の中で、そう唱え続けていた。背中越しに衣擦れの音。俺のすぐ後ろでリリカが着替えているのだ。
―――パサリッ。
これは、服が床に落ちる音だ。
下着姿のリリカを頭の中に思い浮かべる。モヤモヤとした想像の域でしかないその姿が、振り返れば目にすることができる―――。
な………っ、何を考えているのだ。冷静になれ。
着替え終えるのを待つのが常識だろう。絶対に振り返るなよ、俺―――!
「どお?」
やがて、控えめな、か細い声が聞こえてきた。
長いようで短い、苦しみの時間が終わり、ほっと息をつく。
両の拳と膝を軸に、そのままグルリと身体を回転させて、リリカと向き合った。
けれど、その瞬間、俺の葛藤は今まさに始まったばかりだということを悟った。