第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
「けど?」
「リアリン学園長の不正は、あまりにも規模が大きいから、一人の独断で、できることじゃないんだよね。だから………」
「それは、ジル教頭も絡んでるって言いたいわけ?」
私は、アーサーの言葉を途中で遮って声を上げる。
「そう思うのが自然。だから、いずれ、ジル教頭も事情聴取か下手すりゃ逮捕とか………」
「逮捕!?そんなこと、絶対ないよ!」
ジル教頭が悪い事をする人とは、どうしても思えないもん!!
「マインの気持ちも分かるけど………初めから悪人なんていない。よかれと思ってやったことが裏目に出たり、ほんの少し気持ちが揺らいだ時に魔が差すことだってある。正したいと思っても、もう後に引けなくなったり、綻びを直そうとして更に罪を重ねてしまうこともある。誰だって悪に手を染めるか染めないかの瞬間があるんだよ」
「でもっ」
「アーサー、マイン。二人共、落ち着いて聞いてくれ。確かにジル教頭も手助けしていたかもしれない。けれども、今の段階では、憶測でしかない。リアリン学園長が不正を働いていたことだって事実かどうかはっきりしていない。詳しいことは何もわかっていないんだ。俺もなにかの間違いであってほしいと願ってるよ」
悲しげに顔を歪める伯爵に諭されて、フウッと小さくため息をつく。
そっか。アーサーと伯爵にとっても突然のことで、私と一緒で戸惑ってるんだよね。