第28章 私立リアリン学園!10時間目~ルイ&イケヴァン・アーサー~
ルイは、自分の境遇を良しと思っていないようだけど、目を逸らすことも、逃げることもできない。だから、立ち向かって行こうとしている。
この音楽会がいい例だ。
自分達の立場と人脈を使って運営することによって、これからの音楽家の道を切り開こうとしているのだ。
他人のためだけじゃない。それは、自分のためでもあって。
改めて、ルイをすごいと思う。
ワーーッと叫んで、大きな拍手をしたいくらいだ。
そんな高まる感情を抑えて、やっと言葉を紡ぎだす。
「失望なんてしないよ!夢を叶えるために、利用していいと思う。必要なら、力のある人に頼ってもいいんじゃない?いつか立派な音楽家になって、素晴らしい演奏で還元すればいいんだよ!」
「うん。俺もそう思う。そうでありたい」
どこか遠くを見据えているかのような、ルイのブルーの瞳を見つめる。
ルイは、ピアニストになりたいのかな。
………聞こうと思ったけれど、やめた。いろんな思いや考えが、あるだろうから。
前に、ルイが言ったことを思い出す。
『本当は、まだ迷ってる。どうすればいいのか、どうしたいのか………いつか、考えがまとまったら、マイン先生に話したい。聞いてくれる?』
だから、ルイから話してくれる時を待とう―――。