第48章 スタートウィズミー
『焦凍はもう少し、社会性を身につけた方がいいと思う…。』
保健室を借りてカーテン越しに寧々はジャージを脱いだ。
カーテンの外で轟は手だけをカーテンの中に突っ込んで、ムッとした表情をする。
「社会性…」
『そ。
さっきみたいなコトを人前とか、人が通りそうなところで言わないとか…ね?』
カーテンの中でパサッと軽い布の音がするたびに、ソワソワと落ち着かない。
「なら、寧々が可愛い顔しなきゃいいだろ」
カーテンのもう一方からリカバリーガールの吹き出す声が聞こえて寧々は頭を抱えた。
寧々が制服に着替えて出てくると、轟がもう一方の手で頬をなでる。
「赤けぇ」
『もぉ…誰のせいだと…』
ぷくっと頬を膨らます寧々に「悪りぃ」と笑う轟。
『焦凍は?きがえないの?』
「俺は、片腕抜けねぇからいい。」
『そっか、たしかに。』
保健室から教室に帰ると、八百万が2人に近づいてきた。
「私の席をお貸ししますから、お二人並んで座って下さいな」
『わー八百万さん!ありがとうー』
「ありがとな、八百万」
くっつけられた席に座るが、なんだか少し恥ずかしく感じた。
(もちろん、峰田くんのもぎもぎのせいなんだけど…
何となく教室内で一緒にいるのは恥ずかしいな…
今更って感じだけど…
A組の教室は、3回くらいしか来たことないし、アウェー感がまだ…)
寧々は極力轟を意識しないように授業に集中したのだが、轟は寧々の方をほぼガン見で、寧々は顔を教科書に埋めてその視線から逃げた。
それでも教科書越しに感じる視線…
寧々はノートの端に、轟宛のメッセージを書く。
【見すぎ!】