第44章 アバウトミー
「オーストラリアはイイよ」
アラタはフッと笑いながら寧々の両手をすくい上げると、その場に跪いた。
「いろんな人種が混在してる
サラダボールってやつだよ。
ヒーローそのものが給料がそこまで高くないしね。
なりたいやつも、なりたくないやつも半々くらいで、ヒーローは敵が現れたら変身する…普段は、記者だったり、コンビニ店員だったり、教師だったり…。
無個性でヒーローやってるやつもいる。そいつは中国人で、ヌンチャクの達人。余裕でエグい個性のヴィランとやりやってる。」
寧々はアラタの話を聞きながら目を閉じた。
抜けるような青い空の下に広がる、広大な芝生……
想像するだけでも夢のような場所だった。
「ヒーロー科がある高校なんてほとんどない。
あの国は……未だ個性が無かった頃と同じように、人が自分で自分の道を選択している。
喉が焼けるほど甘いドーナッツと、ぬるくなったコーラを飲みながらね」
アラタの髪を撫でる手つきは優しくて、つけている香水は、風のような匂いがした。
『…素敵だね』
「あぁ、良いところだよ。
コンビニとか、ショッピングモールは6時には閉まるけどね」
寧々はクスクスと笑う。
個性が個性ならざる場所…そこでなら私も、こんな惨めな気持ちにならなくて済むのだろうか…
「来る?」
アラタの問いかけに寧々は目を開いた。
「来る?俺と一緒に…
オーストラリア」