第41章 コンビニエントフォーミー4
よろついて床にへたり込んだ寧々の左肩からはチリチリと火の粉が上がりつづけていて、
右側の床はゆっくりと氷が張っていく。
少しでも動けば個性を爆発させてしまいそうだ。
路地裏で、ステインと戦った時は、思う存分使えたから制御の必要もなかったけれど
こんな狭い部屋で発動させて仕舞えば、火事と氷結で部屋はボロボロになるだろう
『焦凍……おねがい、個性解除したい…』
轟にキスをしてもらって上書いた後、もう一度キスをすれば
寧々の中から個性は消える
柔らかな唇が、遠回しにキスをねだった
いつもならすぐに、寧々の望むがまま…そしてそれ以上の事をしてしまうのだろうが
今日の轟は、天蓋のついたベッドにぎしり…と座ると
床に座る寧々を見下す
「他の男とキスした寧々と…したくねぇ」
『しょ…と…』
冷ややかな視線と言葉が心ごと殺すように刺さる
寧々は床についている自分の手が震えていることに気づいた
カタカタと震える指先は、個性の制御によるものなのか…
それとも、恐怖によるものなのか…
伸びてきた轟の指が、寧々のワイシャツにかかり、一つづつボタンを外していく
「…血が繋がってても
そういう事は俺以外として欲しくねぇ…
今だけでいい
爆豪が、寧々のことを愛してねぇ間だけでも
お前を俺だけのものにしてぇんだ」
話しながらゆっくり脱がされるブレザーとワイシャツが、重なり合うように床に落ちた
現れたのは、白い柔らかな肌を包む水色の下着
だが、体には触れることなく
先程同様、切り裂くような視線の中、轟は寧々の顎を引き寄る
『焦凍…ごめんなさい…』
寧々は震える唇で謝るけれど
塞ぐこともなく、ただその免罪を聞いているだけの男は
大きな手でゆっくりと寧々の頭を撫でる
まるで飼い主が飼い犬にそうするかのような仕草で…
無表情に閉じられていた口が開く。
いつも愛を囁く轟の声が寧々の耳を揺らした。
「寧々…舐めてくれねぇか?」