《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
「それはできません……」
トド松先輩は静かに答えた。
「なに?」
あつしさんが眉をひそめる。
「トド松先輩! 早く逃げてください!」
私はたまらず叫んだ。
「そうだぞ、トド松くん。構うな。行こう!」
チョロ松警部がトド松先輩を引っ張る。
トド松先輩は動かなかった。
あつしさんを睨んで仁王立ちしている。
「ゆりちゃんと一緒に行かないと意味がないんだ。最後はゆりちゃんときちんとお別れしたいからね」
お別れ?
私はトド松先輩を見た。
うまく理解できない。
先輩はどこかに行ってしまうつもりなの?
罪が消えれば逃げる必要なんてないのに?
どうして?
「トド松くん、もしかしてまだ逃げることを考えているのか? 僕が橋本くんを離さないと言ったらどうする?」
あつしさんが私を引き寄せた。
「奪い返しますよ。何がなんでも」
「でも、君のその行動は周りの人に迷惑をかけている。君は警察をクビになったからいいかもしれないが、彼女は現役の警察官だ。期待の新人の未来を潰す覚悟なんだな?」
「っ……」
トド松先輩が唇を噛みしめる。
あつしさんはお見通しなんだ、と私は気づいた。
何をどうすれば、トド松先輩に確実に打撃を与えられるのかよくわかっている。
「橋本くんだけじゃない。チョロ松警部もそうだ。君が逃げれば、チョロ松警部は責任を問われ懲戒解雇だろう。この若さで警部までのし上がったんだ。優秀な刑事なのにもったいない。う〜ん、再就職先はあるかな? 刑事一本でやってきたのに今から別の業界に行くなんて難しいだろうね」
「…………」
トド松先輩は悔しそうにあつしさんを睨んだ。