第74章 キミのトナリ オレのトナリ(及川徹)
これ以上此処に居たら
「傷、痛くなかった?」
『うん。大丈夫』
「そう、良かった。
じゃあ…出ようか」
キミに泣き顔を見られそうだよ
だから
「飾り付け手伝いたかったけど
今日は帰ろうか
当日、皆でしよう
猛も喜ぶしさ」
今日はもう一人になりたいよ
それはきっと
『え?あぁ…うん、そうだね
てゆっか飾り付けくらい
私一人でも出来るから
徹達は遊びに来るだけで良いよ?
お料理も…一人でなんとかなるし、さ』
キミも、かな。
「姫凪ひとりに任せたら
俺が岩ちゃんにどやされるから
手伝うよ
あ、お金は要らない。
俺が無理に入ったんだから」
自動精算機の
無機質な音に財布を取り出す
姫凪を制して
札を突っ込み
「ごめんね、姫凪」
呟いてみるけど
やたら煩い精算の機械音と
音声に掻き消されたみたいで
姫凪から返事は無かった
「クリスマス近いのに
なんか変に暖かくない?」
『そう、かな?
朝も雪降ってたし寒いよ』
「…そうかな…」
『そうだよ』