第73章 ♑瞳を閉じても②（赤葦京治）完結

俺の険しい顔に
慌ててオロオロと
口を回す姫凪さんを

「そんな言い訳が
俺に通用するとでも？」

引き寄せて
更に圧を掛ける

『…ゴメンナサイ…
あの…休もうとしたんだよ？
ご飯も食べようと思ってたし
でも、仕事が忙しくて…
仕事してたら余計な事も
考えなくて良いからって
没頭しちゃってたら…
限界越えちゃって…』

姫凪さんの言葉に
俺と逢ってなかった時間が
見て来た様に浮かぶ
きっと痛いのも苦しいのも
泣く事さえも全部全部
押し殺して
笑ってたんだろう
白い手の先は
頑張り過ぎたせいで
前より赤く腫れて切れて
荒れている

「バカ…ですか？
何してたらそんな具合悪そうな
様子になるんです？
食べてないでしょう？
寝てもないんじゃないですか？
指先のケアも…
チャントしないとって
口煩く言ってたの忘れたんですか？
…本当…バカ…
少しでも離れたいとか
思った事が…バカだった…」

後悔しても意味はないけど
せずにはいられない

『…ごめん、京治…
約束なにも、守れてない』