第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
「そのうちに時間を割ける程の
余裕ないですよ…
勘弁してくださいよ
姫凪さんが大変だって
アイさんが…」
苛々を隠しながら話す俺の背中に
「余裕ない所に
遅れて来て悪かったね」
不快さを煽る声
「やっと来たか!
遅いぞ!!
来ないかと思ったじゃねぇか!!」
「本当ですね
何様のつもりなんですかね?
それどころじゃないっていうのに…」
噛み付く木兎さんに乗っかって
振り返る…と
「…お前が送って来た
場所の説明が
もっと正確だったら
俺が待つ側だったんだけどな?
なんだよ、コレ
誰が来れるんだ?
こんなテキトーな説明…で!」
携帯の画面に雑な説明と
下手くそな地図に
【このへん】と殴り書きされた写真
「…これは…」
さすがにフォローのしようがない
「大体分かんじゃん?
この辺だよ、この辺!」
「分かるか!
迷うし、行き止まりで
立ち往生するし
やっと見つけたと思ったら
帰ろうとしてるし…!」
憎き相手ではあるけど
少し同情する様な
良い気味な様な…
って、そんな場合じゃなかった。