第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
「姫凪…やり直そうぜ?
もう泣かさないから
昨日の続きしようぜ?」
俺の胸を掻き毟るのは
非情に響く木兎さんの声じゃなく
聞こえてこない
姫凪さんの声
否定して下さいよ
拒否して下さいよ
なんで…黙ってるんですか?
昨日二人で居たのは…
俺の勘違いでも思い込みの
被害妄想でもなく本当だったんですね
「…ヤッパリ、そうだったんですね
どこかで違うと思ってたんですが
…悪い方の正解だった…のか」
じゃあ、ココに居る邪魔者は
「邪魔してスイマセン
これ…は
俺が持ってたら駄目ですね」
俺だって事じゃないか。
ユックリ部屋に入り
鍵を渡すつもりが
力の入らない指から転がり落ち
木兎さんの隣に並ぶ
同じキャラクターの
キーホルダーが皮肉にも寄り添って
俺を哀れそうに見上げてる
並ぶ二つを蹴り飛ばしたい気持ちを
必死に抑える様に唇を噛んで
二人に背中を向ける
『京治!』
やっと聞こえた姫凪さんの声は
掠れているけど
相変わらず綺麗で
俺の大好きな声で
振り返りたい