第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
人魚のように声を
失ったなら良かった
それなら何も聞こえなかった
「何も言う事ない?
それとも…言えない…?
じゃあ身体に聞く。
悪いけど優しく抱けない、から」
『いや、だ…』
こんな言葉も
聞かずに済んだのに。
「イヤって言っても
いつもノリノリだろ?
手こずらせるなよ」
らしくないタメ口
乱暴な振る舞い
ベットに縫い付けた
姫凪さんの服を剥ぎ取り
肌の感触を確かめながら
キスマークを落としていく
記憶にあるままの
キスマークの位置に
ホッとするはずなのに
気持ちは荒ぶるばかり
髪の毛で隠せない位置に
噛み付いて
色濃く付ける
俺と交わった証
戸惑う姫凪さんから
声があふれる前に塞いだ唇
『…んっ!』
キスから逃げる様に
暴れる姫凪さんが
悲しくて更に深く舌を捩じ込むけど
絡まって来ないどころか
イヤイヤ、と
拒否を示す姫凪さん
なんでだよ
いつもと今が重ならない