第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
木兎さんにこんな事を言うのは
初めて…でもないか。
あの時、姫凪さんを巡った時も
結構お互いバチバチでキツかったよな
アレが最初で最後だと
思ってたのに
〈…分かった。
お前がそう言うなら
今は退くけど…さ
絶対姫凪を泣かせんな
俺より幸せにするって
信じたから、あの時俺は
退いたんだからな〉
「言われなくても
そのつもりですよ
じゃあ、午後の講義かあるんで
これで」
今の方がもっと
空気が張り詰めてる
切った通話
手の中で暗くなる画面
そして
「なに勝手に切っとんねん!
誰の電話や思ってんや!あほ!」
侑の怒鳴り声
「ああ…悪い…つい」
携帯を返して
大きく吐いた溜息
ソワソワする
イライラする
ダメだなんて分かりきってるのに
木兎さんに頼ったであろう
姫凪さんへの
モヤモヤで胸の中が気持ち悪い
「なんなん?喧嘩しとん?」
別に喧嘩なわけじゃない
でも、違うと言い通せる
雰囲気じゃないから
「…どうかな」
一言曖昧に返す