第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
目を瞑っても
今どっちの指が当たったのか
分かるほど
俺の中は貴女の事ばかりなのに…
「(見すぎですよ、照れる)」
『(もう!京治!)』
貴女の心の中は
きっとそうじゃないんでしょうね。
勘違い?考え過ぎ?
だったらどれだけ良いだろう
鏡越しに合った目
大好きな瞳の中に
確かに居るのに
居心地悪そうに
揺らめく俺
こんなの初めてだ
ねぇ、昨日貴女に何があったんですか?
俺に秘密にしてるのは何?
誰と居た事を隠したいんですか?
全てを飲み込んだまま
無言で見つめ合う
俺と姫凪さん
少しスッキリまとまった
癖っ毛の頭を
後ろから鏡に映され
"どうですか?"と問われる声に
「良いですね、ありがとう御座います」
在り来りなセリフを返し
席を立ち会計を済ませる為にレジに立ち
「ありがとう御座います
また、後で」
お釣りを出す
姫凪さんの指に
ソッと触れる
カサついた
冷たい指先は
学生時代とは違った感触
変わった…のは
指先だけだと思いたいのに
『京治?』
きっと違うんだろうな…