第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
シャンプーをしてくれる
姫凪さんの指を感じながら
顔を隠すタオルに
溜息を吹き掛ける
『痒いところとか
気持ち悪いところ、ないですか?』
ありますよ。
気持ち悪いことだらけで
今にもドロドロが溢れて
貴女を汚しそうなんです
…なんてね。
「…特にないです」
そんな事言えませんけど。
『では、流していきますね』
髪の毛に
お湯がぶつかる音が
耳に響く
家で髪を洗われてる時より
設備も整ってて
気持ち良く感じるはずなのに
なんででしょうね
あの部屋の狭いバスルームで
デカイ身体をアチコチにぶつけながら
洗われる方が
気持ち良かった気がする
そんなわけないのに
どうしてもサッパリした気に
なれませんよ
『じゃあ、あちらのへどうぞ
セットお願いしまーす
…お疲れ様でしたー』
「「お疲れ様でしたー」」
俺の背中に
名前も知らない女性が立ち
姫凪さんは
その横で控えめに
俺の髪を乾かす補助をする
二つのドライヤーの音が重なり
度々耳に当たる指先