第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
『あ、もうこんな時間…
帰って用意しないと仕事…が…』
容赦なく鳴る
アラームは
呆気なく心を折って
既読を付けたまま
トーク画面を閉じさせる
昼休みに
チャント返そう
帰ったら謝ろう
そして今日こそ
チャント話そう
少しずつ先延ばしにした
決着は私と京治に
今までにない
大きな歪を作ってしまう事になる
ギリギリで仕事場に
滑り込み
疲れた身体にムチを打つ
新人の朝はマジで地獄級に
忙しい。
掃除に用意に朝礼に。
店が開けば
水仕事のオンパレードで
『痛ぁ…また傷開いちゃった…
マッキー塗る絆創膏持ってない?
傷開いちゃって…』
元々ボロボロの手の傷は
更に深くなっていく
「おう、これ使って良いよ
うわ…結構エグいな…
手が空いてたら手伝うから
洗い物とかは
俺に振れよ」
『ありがと。
マッキーが暇してたら頼む』
小声の会話を終わらせ
また仕事に励む
客足が少しずつ引き始める
お昼時
「シャンプーとセットだけとかでも
大丈夫ですか?」
入り口から聞き覚えのある声がした