第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
押し返してたハズの
光太郎の身体の温度は
とても心地よくて
首はもう横に振れなくなってた
「姫凪が
眠くなるまで側に居るから
喋りたきゃ喋って
泣きたきゃ泣いて
笑えるなら笑って…?」
優しい声に頷いて
脈絡なく話しては
泣いて
いつの間にか遠退いた意識
朝、目覚めた時には
光太郎の姿は無くて
手紙と部屋の鍵が
ポツンと置かれて居た
【スマン!
黒尾くんに車返す約束忘れてた!!
返しに行っても帰して
貰えなくなりそうだから
鍵掛けても帰っててくれ!】
安易に想像出来る
クロに猛烈に説教されて
クロの家でヘバッてる
光太郎の姿
悪い事をしたと思いつつ
少し零れた笑みを凍り付かせのは
携帯に溜まった
京治からの連絡
そうだった。
私、京治に嘘をついたまま
ここで光太郎と
忘れようとしてたキスの味も
這った指の感触も
思い出して
息が浅く荒くなる
『返事しなきゃ
折り返しも…』
携帯を触る手が震えて
上手くいかない
ロック解除