第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
「おい、笑うなよ
なんか良い雰囲気なのによー」
『笑わせてよ
顔の筋肉固まり過ぎてシンドイ』
「どんな状況かわっかんねー!」
『だろうね~
光太郎には無縁だよ』
クスリ、クスリと
唇の端からもれてくる笑いで
「どーせ俺は能天気だよ!
みなまで言うな!
つーか、どうすんだよ!
ゆーてもう遅いぞ!」
『…じゃあ、お言葉に甘えて
送ってもらおうかな』
少しだけ気持ちが上がった
このタイミングでなら
あの寂しい部屋でも
寝られる様な気がして
グッと背中を伸ばして
前を向く私の頭を
「…おう!甘えろ甘えろ!
むしろ甘えしかなくなれ!
オマエは…頑張り過ぎなんだよ
また痩せたんじゃね?」
グリグリと撫でて
歩き出す光太郎の手は
熱くて優しくて
グッと胸が苦しくなる
本当に変わってないな
笑わせるか泣かすか
どっちかにしなさいよ
「…俺は赤葦と違って
方向音痴だかんな
道迷っても文句言うなよ」
『…言わない…』
言えないよ