第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
今日は何だか夜遊びしたい気分なの
京治が来ないあの部屋に
帰りたくない気分なの
マッキーと距離を保ち歩き
騒がしい繁華街より
大きな音で溢れる
ライブハウスに足を踏み入れた
曲は特に好みじゃないけど
騒がし過ぎる箱の中は
モヤモヤを薄めて行ってくれるみたいで
付いてるワンドリンクを
お酒に換えて
隅っこで音を聞いてると
ライブを終えたアキラさんが
マッキーと合流して
ホールに入って来た
「どうだった?姫凪ちゃん!」
『…あ、ごめん
あんまり聞いてなかった…』
「正直か!
でも俺もアキラくんの
バンドあんまりよく分かんなかった~
なに?あれはメタルなの?」
出来上がったマッキーが
大袈裟に笑う声に
愛想笑いを返して
携帯をチラリと覗く
特に通知の来てない画面に
時刻だけが浮かび上がって
愛想笑いさえ消えて行く
『今日はありがとう、帰るね』
終電まではまだあるけど
ここに居る意味はもうないし、と
ドリンクカップを
ゴミ箱に投げ捨てて
ライブをハウスを後にした