第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
「そう、ですか。
なら…迎えに行きますから
終わったら連絡下さい
今日は木兎さんも
宮侑も全部断って
姫凪さんだけ
待ってますから、ね?」
必死にいつもと同じ様に話し掛けて
〈分かった…連絡する
じゃあ、仕事に戻るから…〉
なんとかいつもと同じ返事を
引き出すけど
「姫凪さん!
あの…俺…姫凪さんだけですから
好き…ですよ」
〈…私も。
じゃあ、また…!〉
いつもの電話後の
満たされた感覚は欠片もなく
ソワソワして落ち着かない
大丈夫。
顔を見れば
瞳を合わせば
触れ合って心を重ねれば
きっといつも通りになるに
決まってる。
無理やり気持ちに納得を押し付け
俺も俺の日常に戻った
「赤葦、今日は…」
「今日は全部パス。
姫凪さんと待ち合わせしてる」
「そうなんか?
良かった!なんか昼えらい険悪やったし
喧嘩してたらどないしょ思ったけど
そっちも上手いことやったんやな」
「これから…かな?
そっちこそ上手いことやったみたいだな」