第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
それに俺の意識は
「止めなくて良いの?
彼氏クン」
アキラさんに集中してるから。
「いつもの事ですよ
それより、ウチの姫凪が
前回に引き続き
お世話になりました」
わざとらし過ぎる
余所余所しい挨拶をして
「姫凪さん
木兎さん帰りましょう
アキラさん、お世話様でした」
戯れ合う二人の間に入り
タクシーに乗り込む
「まだまだ若いね…
姫凪ちゃん!
また髪の毛頼むよ
それと"アレ"ありがとう」
後ろから聞こえた声に
振り返った時には
タクシーはエンジン音を響かせ
ゆっくり走り出す
「姫凪さん、あの…「アレってなんだ?」」
「木兎さん!
それは俺のセリフです!」
「え?だって赤葦モジモジしてたからさ」
確かに聞きにくかったけど
そんなアッサリ聞かれたら
彼氏の立場というものが…ね?
『大したものじゃないよ
酔っ払った時に迷惑掛けたから
御礼を渡しただけ
本当はマッキーから間接的に
渡してもらうつもりだったけど
今日たまたま来たからさ』