第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
なんで潰した花巻さんじゃなくて
この人が姫凪さんの
電話に出るんだ?
二人は今どこに…
グルグルと良くない方向に
思考の渦が深くなる
余計な事考えるな
考え過ぎに決まってるんだから
でも、なんで…
俺以外の前でそんな無防備に…
ギリッと噛んだ唇から鉄臭い味が
鼻に抜ける
〈おーい、聞こえてるか?
家分かんねぇから
迎えに来るかどっか目印になる
近くの店教えてくれ
このままじゃタクシーも拾えやしねぇ〉
悔しがってる暇はない
早く隣を奪い返しに行かないと…!
「…迎えに行きます。
今どこですか?」
場所は家から然程遠くない繁華街
タクシーを捕まえるより
走ったほうが早い、と
久々に思い切りダッシュして
「…スイマセン、お待たせしました」
姫凪さんと電話の主の待つ場所へ
そこには俺と同じくらいの背丈
オシャレに服を着こなした
爽やかな男と
「姫凪ちゃん来たよ、彼氏」
グッタリ…と言うより
爆睡な姫凪さん