第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
赤葦side
浮気なんか疑った事もなくて
誰に狙われてたって
俺が全力で阻止したら
それ以上に発展する事もなくて
どこか余裕があった
貴女を奪われる事は
危機を感じる事は
もう無い、なんて
自惚れだったんだろうか。
俺の知らない世界には
俺の知らない誰かが居て
貴女の心を少しずつ
未知の世界へ
連れ出して行く
"行かないで"
"側に居て"
そんな言葉も朝の喧騒に紛れてしまう程
二人の朝は
いつも風の様に過ぎて行く
同じ道を同じ速度で歩いてた日々が
懐かしい
大人ぶって言った
"行ってらっしゃい"を
後悔する日は
確実に多くなっていった